今話題の「ハングル書芸」の魅力とは? 日本12地域を旅するオンラインイベントを開催するルシアさんのワークショップイベント体験

韓国ドラマや韓国映画、K-POPなどをきっかけに日本でも多くの人々が様々な韓国文化に興味を持つようになった。韓国語を学ぶ学習者が増える中、ハングル文字を用いたカリグラフィーなどの作品にも注目が集まっている。ドラマ『冬のソナタ』を視聴し韓国語の音の響きに魅了され韓国語の勉強を始めた筆者。かねてから興味があった「ハングル書芸」を体験すべく、1月30日(土)、「Meet Lucia 12 in Japan/ハングル書芸ワークショップ」(日本の12地域を旅するオンラインイベント) in山形に参加した。


講師は韓国のハングル書芸家チェ・ルシアさん。

ぺ・ヨンジュン主演映画『スキャンダル(스캔들)』(2003年)では劇中、女主人公チョン・ドヨンが書をしたためるシーンの手の代役を務めると共に、ミュージカル『王家の紋章(왕가의 문장)』(2016年)のタイトル文字や各種展示会及び書籍のタイトル文字、焼酎ラベル「좋은 데이(Good day)」(2006年)を始めとする多数の広告作品などを手掛けている。また、日本を始め台湾、香港、ベトナム、シンガポール、オーストラリアなど海外でも書芸パフォーマンスやワークショップなど精力的に活動を繰り広げ、「ハングル書芸」の魅力を世界に向け発信している。

「Meet Lucia 12 in Japan/ハングル書芸ワークショップ」は日本の12地域を旅するイベントで、本来ならばルシアさん自身が日本各地を旅しながら各地域の人々と触れ合い、交流を深める場となるはずだったが、今回はZoomによるオンラインでの開催となった。


第1回目となる開催地は山形。オンライン開催であるため筆者のように山形以外の地域に居住する人も参加することができた。ルシアさんは日本語も堪能でイベントはほぼ日本語で進行されるが、韓国語通訳もあり、ハングル書芸に興味のある人ならば韓国語初心者やハングル文字自体を知らない人でも誰でも気軽に参加できる。用意する物は筆ペンとA4用紙6枚ほど。書道用の小筆でももちろんO.Kだ。


午後7時、いよいよオンラインイベントがスタート。

ソウル市内にある事務所から出演されたルシアさんは参加者一人一人の名前を呼びながら、にこやかな笑顔を浮かべて参加者全員と挨拶を交わしていく。


まずは参加者らが開催地である山形の魅力をルシアさんに紹介。さくらんぼ、米沢牛、蔵王スキー場、クラゲ水族館を始めとする山形県の特産品や見所についての説明に、ルシアさんは身を乗り出して熱心に耳を傾けては感嘆の声を上げる。筆者もルシアさんと共に山形を旅行している気分になる。


全員の話が終わると、ルシアさんは筆を手に取り、さくらんぼ、米沢牛などの山形に関する言葉をハングル文字で次々と描いていく。手元カメラで映し出される躍動感溢れる筆の動きと共に、筆から生み出される文字の美しさ。即興で披露されたハングル書芸パフォーマンスに思わず目を奪われる。


韓国の伝統的な書芸についての説明や、ルシアさんのこれまでの作品についての紹介の後、自分の名前を筆ペンを使いハングルで書くことになった。ハングルが書けない人は日本語で書いてもO.Kだ。緊張しつつ自分の名前をハングルで書いてみるが、簡単そうでなかなか難しい。ルシアさんは参加者一人一人が書いた文字を見ながら参加者の性格や人柄などを類推していく。字にはその人の性格や人柄などが現れるという。


直線、曲線、強弱をつけて線を書く練習と共に、山形県のマスコットキャラクター「きてけろくん」を題材にしさくらんぼの形や三角形、四角形、ハートの形など様々な形を描いていく。楽しみながら手を動かしていくうちに少しずつ筆に手が馴染んでいくから不思議だ。


韓国語で使用する文字のことをハングルといい、ハングルはローマ字のように子音と母音の組み合わせでできている文字だ。母音は基本母音10個と二重母音11個を合わせた21個あり、子音は基本子音10個と激音4個、濃音5個を合わせた19個だ。


今回は子音の基礎的な書き方を丁寧に教わった。

ひらがなや漢字などと同様に、ハングルにも書き順があり、ハングル書芸もやはり書き順が大切だという。他にも書き始めの入り方、角度、長さ、他辺とのバランス、点の位置や中心の取り方など、注意しなければならないことがたくさんある。ルシアさんのお手本を見ながら練習するもなかなか思うように筆が動いてくれず、もどかしい。けれど、すごく楽しい。


ルシアさんの楽しいおしゃべりと明るい笑顔が溢れる1時間半のハングル書芸ワークショップイベントはあっという間に終了。参加者全員がハングル書芸の魅力に触れ、満喫した。


イベントの余韻が冷めやらず、手元に残ったA4用紙に書かれた自身の文字を見つめる。拙い文字だが何だか愛おしく思えてくる。

筆者は小中学校で週1回書道の授業を受け、幼い頃は書道教室にも通っていたが、ここ何年かは年賀状の宛名書き以外で筆ペンを握る機会さえなくなっていた。筆を握りひたすら文字を書くことに集中する。コロナ禍でせわしなく過ぎていく日常の中で、ハングル書芸ワークショップへの参加は見失いがちだった自分という存在を改めて見つめ直すいい機会となると共に、この上ない癒しの時間となった。


ハングル書芸に興味を持たれた方は、一度ワークショップを参加してみてはいかがであろう。2回目となるワークショップは2月27日(土)に北海道で開催され、成功裏に終了。次回、3回目となる「Meet Lucia 12 in Japan」は3月27日(土)に沖縄で開催される予定だ(沖縄在住者だけでなく全国各地からの参加も大歓迎とのこと)。


◆ハングル書芸の歴史について

ルシア:韓国は当初、話し言葉である固有語と文章で表記される文字が異なっていたため、文章に記録する際は表意文字である漢字が使われていました。

1443年に世宗大王がハングル(固有の文字)を創製してからは漢字ではなくハングルで文章をすべて記録することができるようになりました。作られた当初のハングルの点画(てんかく:漢字を構成する点と画の総称)は古典体でしたが、筆写の速度や時代の美の感覚により変化を遂げ16、17世紀の過渡期を経て17世紀後期、宮体となりました。20世紀に入ると宮体や板本体、民間で使用される民体など様々な形に発展しました。

私はハングル書芸がこのような伝統に基づきながら、人々の感情や時代を表す字としてこれからも発展し続けていくべきだと思っています。


(text:Akane Tanaka / 写真提供:チェ・ルシア)



◆プロフィール

チェ・ルシア(최루시아)

1968年10月23日生まれ、韓国・忠清北道(충청북도)清州(청주)出身。

大学1年から「ハングル書芸」を本格的に学び始める。

ミュージカル『王家の紋章(왕가의 문장)』(2016年)のタイトル文字や書籍のタイトル文字、焼酎ラベル「좋은 데이(Good day)」(2006年)を始めとする多数の広告作品を手掛ける。ぺ・ヨンジュン主演映画『スキャンダル(스캔들)』(2003年)では女主人公チョン・ドヨンの手の代役を務めた。

2007年から日本で定期的に書芸ワークショップを開催。以後、台湾、香港、ベトナム、シンガポール、オーストラリアなど海外でも書芸パフォーマンスやワークショップなど精力的に活動を繰り広げている。



Meet Lucia 12 in Japan【沖縄】

◆日時:3/27(土)19時~20時半

◆オンラインzoom

◆定員:20名

◆参加費:2000円

◆持ち物:筆ペン(あれば小筆)、A4用紙6枚

※振込先とzoomIDは申し込み後に案内有

▼お申込みはこちらから

https://form.run/@meetlucia0327

▼イベントページ

https://fb.me/e/2elJ61zvk

◆講師:チェ・ルシア

◆お問い合わせ先: イベント事務局 武田美里

misakorea19@gmail.com

チェ・ルシアさんインスタグラム

https://www.instagram.com/meet_lucia/?igshid=101bkhi56r6z9

「Meet Lucia 12 in Japan/ハングル書芸ワークショップ」は毎月最終土曜19時~20時半に開催。

3月は沖縄、その後は宮城、神奈川、静岡、長野、京都、大阪、香川、福岡などの地域で引き続き開催され、2021年1月の山形を皮切りとし1年かけて日本各地を巡る旅となる予定だ。


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